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Notion共同創業者アクシェイ・コターリとスマートニュース村上臣さんが語った「AI時代に必要なプロダクト戦略」

作成者: Ayame Takenaga

Marketing Lead, Notion Japan

約 7分で読めます

生成AIの進化によって、プロダクト開発の進め方は大きく変わりつつあります。仕様書を書き、デザインを固め、エンジニアが実装し、リリース後に改善する——。これまで当たり前だった開発プロセスは再定義され、開発スピードは飛躍的に上がっています。一方で、プロダクトリーダーや組織には、AI開発環境に合わせたマインドセットの転換や人事・組織設計の見直しが求められています。ただ、そのベストプラクティスはまだ確立されていません。

そうした問いを追求するイベントが、2026年7月9日に都内で開催されました。当日は、本社から来日したNotion共同創業者のアクシェイ・コターリ(Akshay Kothari)と、スマートニュースのヴァイス・プレジデント コンシューマプロダクト担当の村上臣さんが登壇。日本のエグゼクティブ層やプロダクト開発に関わるリーダーたちを前に、「AI時代のプロダクト戦略と開発の意思決定」をテーマに、それぞれの知見を共有しました。

【Notionアクシェイ・コターリ登壇】NotionはAI時代に向けて「仕事の基盤」になる準備を進めている

イベントの冒頭、アクシェイはNotionの歩みを振り返りました。2013年の創業以来、ドキュメントを中心とした初期フェーズから、データベースや多様なコンテンツを扱うフェーズへと進化してきたNotionは、現在、AI時代に求められるプロダクトへと変化を続けていると語りました。

では、Notionは具体的にどんなプロダクトを目指しているのでしょうか。アクシェイが示したのは、AI時代の「仕事の基盤」という姿です。

従来は、開発することそのものに大きなハードルがありました。しかしAI時代のいま、作ること自体の難易度は下がりつつあります。一方で、顧客の声、営業データ、市場動向など、意思決定に必要なインプットは増え続けています。さらに開発者は、調整やコミュニケーション、複数ツールの行き来にも多くの時間を費やしており、「何を作るべきか」を判断する難しさはむしろ増しています。

だからこそNotionは、ナレッジやデータ、チームをつなぐことで意思決定を支え、知的生産のインフラになることを目指している、とアクシェイは語りました。

【スマートニュース村上臣さん登壇】AI前提の開発に向けて新しい職種を創出

続いて登壇した村上さんは、スマートニュースにおける開発の進め方の変化を語りました。

村上さんが強調したのは、AIによって開発コストが劇的に下がり、プロダクト開発における意思決定の順序が反転しているという点です。

これまでは、実装に入る前にPRD(プロダクト要件定義書)を書き、仕様を固め、手戻りを減らすことが重要でした。しかしAIの台頭によって開発コストが下がったことで、いまはPRDよりも先にプロトタイプ(試作品)を作り、実際に触りながら判断する流れに変わりつつあるといいます。

並行して議論の仕方も変わり、いまは実際に作ったものを体験しながら話し合うようになりました。村上さん自身もレビュー方針を変えており、「デモがなければ見ない」と社内に伝え、議論の起点を「仕様」から「体験」へ移しているそうです。

こうした開発方法の中で生み出されるプロダクトは、スピーディーにリリースされつつクオリティも高くなっています。同時にユーザーがプロダクトに期待する水準も上がっているため、企業は以前よりも短いサイクルで改善し続けないと、競合に比べて「進化していない」と見られる恐れがあります。

このような変化に対応するため、村上さんはスマートニュース社内で、「AIプロトタイパー」という新しい職種を設けました。

AIプロトタイパーは、プロダクトマネージャー、デザイナー、フロントエンドエンジニアの役割を横断的に担い、アイデアをもとに素早くプロトタイプを作る業務を遂行しており、現在は村上さんのもとでこの職種に就いています。

AIプロトタイパーの役割は、単にデモを作ることではありません。意思決定のスピードと解像度を高めることにあります。

部門や役職の垣根を越えてメンバー同士がフラットにつながるスマートニュースでは、ビジネス部門やCS部門など、開発部門以外からもアイデアが寄せられます。AIプロトタイパーは、その中から有望なアイデアをもとにデモを作成。出来上がったデモを関係者で触りながら議論することで、机上の空論に終わらせず、「本当に作るべきか」「どこに価値があるのか」を短時間で判断できるようになりました。

【対談:アクシェイ×村上臣さん】職種を越えて開発する時代に備えた組織づくりを

アイデアがあれば開発できる。職種の越境が起こる

続いてのセッションはアクシェイ、村上さんの対談です。司会はNotionの生垣侑依が務めました。

アクシェイは対談が始まってすぐに村上さんの「AIプロトタイパー」の話に共感したと語りました。実はNotionでも、「プレイグラウンド」と呼ばれる環境を用意しており、ここではデザイナーがNotionの実際のプロダクトで使われているUI部品やデザインルールを使って、完成版に近い見た目・操作感のプロトタイプを作ることができます。

将来的には、このプレイグラウンドをデザイナーだけでなく、営業チームやマーケティングチームなど開発担当ではない社員も使えるようにし、誰もが自分のアイデアを自分の手で形にできる未来を目指していると明かしました。

アクシェイの言葉を受けた村上さんも、スマートニュース社内で同じような動きが起こっており、職種を問わず使えるプロトタイプ環境を整備していると紹介しました。認証やデータベースなど、本番に近いが安全に試せる環境を用意し、ビジネス職やセールス職のメンバーもアイデアを形にできるようにしているそうです。

Notionとスマートニュースの現状から、AI時代のプロダクト開発では、職種の越境が前提になることが予想されます。

AIが作った70点のものを人間は100点に引き上げる

対談中、最も白熱したテーマのひとつが、「テイスト(良いものを見分ける力)」です。

アクシェイは、AIによってプロダクトの数が爆発的に増える中で、重要になるのは「人に喜ばれるかどうか」であり、そこに開発者自身の経験が問われていると語りました。

AIは一定水準以上のプロダクトを作ることができます。しかし、ユーザーの心を動かす体験を生み出すには、そこに人間ならではの視点や感性を加える必要があります。経験を通じて得たインスピレーションや判断力こそが、AIのアウトプットをより良いものへ引き上げるのです。「AIが平均値を出すなら、私たちはそこにプラスアルファを加えることが重要だ」とアクシェイは強調しました。

その言葉に村上さんも強く共感しました。「AIは70〜80点のものを出してくれますが、それを90点、100点に引き上げることが重要です。そのためには、センス、経験、そしてAIとのチューニングに対する習熟が求められます」

AI時代の組織に必要なのは「適応力」と「オープンマインド」

最後に、AI時代に求められる人材についても議論が交わされました。

アクシェイは、Notionが求める人材像として「適応力があり、オープンマインドな人」を挙げました。AIの世界では、毎月のように前提が変わります。半年前に失敗したアプローチでも、新しいモデルの登場によって再び可能になることがあるからです。だからこそ、過去の判断に固執せず、新しい技術を試し続けられる適応力が必要だと語りました。

村上さんは、AIプロトタイパーに求める資質として、好奇心、プロダクトが好きであること、すぐに作ろうとする姿勢を挙げました。スマートニュースに在籍するAIプロトタイパーのバックグラウンドは、デザイナー、エンジニア、プロダクトマネージャー、ビジネス職などさまざまですが、共通しているのは「自ら動いて作る」主体性を持っていることです。

ただし村上さんは、こうした素質が「いまの時代だから」必要というわけではないとも明かしました。スマートフォン向けサービスの開発に携わっていた当時、部下に「実際の画面サイズで触り、スクロールやタップの感覚を大事にする」よう伝えていたそうです。この「触れる、体験する」ことの大切さはAI時代になっても変わりません。どれだけ技術が進んでも、「作って、体験する」は開発の本質なのかもしれません。

個人だけでなく組織にも柔軟性が求められるAI時代

今回のイベントで特に印象的だったのは、AI時代のプロダクト開発では、働き方だけでなく、担い手の役割そのものも大きく変わりつつあると語られていたことです。

PRDより先にプロトタイプを作ることで、より高い解像度で意思決定できるようになる。さらに、開発しやすい環境が整うことで、職種を問わずアイデアを形にすることが求められる未来が近づいています。

そうした時代に重要なのは、新しいことを厭わない柔軟性です。これは個人だけでなく、組織にも求められています。

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